キノコの話 南仏プロヴァンスの12か月(10月)より / by Takashi Koide

もう10月ですね。
暑かった夏もいつのまにか過ぎて、すっかり秋めいてきました。

秋が近づくと、ふと読みたくなる本があります。
それはこの本。都会を離れ、南仏プロヴァンスに移住した夫婦が、おいしいものを年から年中食べては紹介するというけしからん本です。



 ~南仏プロヴァンスの12か月 ピーター・メイル著 10月より~ 
朝食が終わりかける頃、誰かが窓を叩いた。見ると、ムッシュー・サンチェスの日焼けした丸顔がこっちを覗いていた。彼は、靴が汚れているから、と言ってどうしても中へ入ろうとしなかった、聞けば六時から森へ来ていたという。 
 おみやげがある、 
サンチェス氏は背中に隠していた古いチェックのソフト帽を差し出した。
山ほどあるキノコだった。 
彼はオイル、バター、ガーリック、微塵切りのパセリなどを使ったお気に入りのキノコ料理についてひとくさり蘊蓄を傾け、毒キノコに中(あ)たって死んだ三人の男の恐ろしい話を聞かせた。 
夕食のテーブルに座ったまま白目を向いて死んでいるのを近所の人が発見した、というくだりでムッシュー・サンチェスはキノコの毒がまわって体が硬直し、目の玉がでんぐりがえるところを迫真の演技で再現してみせた。
いや、心配無用。 
この帽子の中のキノコは絶対に大丈夫。その点は自分の首にかけて保証する、と彼は言った。 
ボナ・ペティ!

photo credit: nironadsu via photopin cc

話はこのあと、ピーター・メイル夫妻がムシュー・サンチェスからもらったキノコを食べて、そのスーパーでは絶対にありえない森の香りをたっぷりと含んだ濃密な味の美味しさにおどろいて、さっそくキノコの本と長靴を買ったという話が続くわけですが...。

日本でもひと昔まえは、秋といえば「キノコ狩り」ってけっこうやってたと思うんですが、毒キノコとかの事故があるとたびにニュースになったりとかで、どんどん減ってるんでしょうか?

確かに日本でもスーパーに行けば完全にクリーンな環境で生産されたキノコが安く手に入るけど、なんか森の匂いとか想像できないもんね。

この本の舞台、南仏プロバンスでは、オヤジどもが山の中を一日這いずりまわってとったきのこを、どっさりと薬局に持って行って拡げて薬剤師に毒キノコのチェックをしてもらうらしいです。このシステムなら安心してキノコ狩りも楽しめますね。

うーんしかし読んでるとたまらなく、プロヴァンスの豊かな森の中で育ったキノコ食べたくなります。





南仏プロヴァンスの12か月 (河出文庫)
ピーター メイル
河出書房新社
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