41回目の誕生日 / by Takashi Koide

まあ41回目なんでびっくりするようなことは、あまりない。
後厄なんで厄除けに言ったほうが良いとアドバイスをいただいた。菊間によい神社があるらしい。

で、書くほどの大したこともないので書評を一つ。

センセイの鞄
川上 弘美

文藝春秋
2004-09-03
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おすすめ度 

最近供給過多でかなりの未読本が...。
しかしこの本は一気に読みました。そんでもって読み終わってすぐ、この作者の本を他にも2冊追加購入。(この買い方がイカンのだよぉ)

傑作の恋愛小説。でもそこらへんのとこはハズしておいてお気に入りのところを二つ引くと。

主人公のツキコさんがセンセイと居酒屋の主人サトルさんと行ったキノコ狩り。山中の切り株に腰を下ろして、木々や虫の気配を感じたとき、ひとりで生きてきた主人公の、自分と自分ををとりまく世界が一瞬つながる。

町 にいるときはいつも一人、たまにはセンセイと二人、でしかないと思いこんでい た。町には大きな生き物しか住んでいない。そう思っていた。しかし町の中にいるときにだって、よくよく注意してみれば多くの生き物に囲まれているにちがい ない。センセイと、わたしと、たった二人なんていうことでは、なかったのだ。居酒屋にいても、いつもセンセイのことしか目に入っていなかった。そこにはサ トルさんもいたのである。おおぜいの、顔なじみのお客だっていたのだ。でも、どのひとも、ほんとうに生きてているひととして認識していなかった。生きて、 自分と同じように雑多な時間を過ごしているのだとは、考えていなかった。

こ の作品の主人公やそれを取り巻く世界も、この作者がこの作品で書かなければ忘れ去られているようなどこにでもあるようなもの。そんな忘れ去られたような世 界の中で、こん なに美しく穏やかな人々の営みがあることを作者は教えてくれる。自分ではなく他者の生命のを営み感じるとき、すがしい気持ちが心を満たしてくれる。

まぐろやかつおの回遊水槽の前に、わたしとセンセイは佇んだ。
(略)
「センセイ、好き」

「ワタクシも、ツキコさんが好きです」
真面目に言い合った。わたしたちは、いつでも真面目だった。ふざけいるときだって、真面目だった。そういえば、まぐろも真面目だ。かつおも真面目。生きとし生けるものはおおかたのものが真面目である。

みんな真面目に懸命に生きている。自分も他者も。
作者の想像力は、まぐろやかつおの真面目さにも及ぶ。

日常のほんの小さなことを大事にして、いちいち真面目に向き合っていくこと。そんなこと事がいいんだよなぁ。良い作品です。