ゆっくりさよならをとなえる 川上弘美

 川上弘美のエッセイ集です。

 タイトルは、最後の一編「ゆっくりさよならをとなえる」の最後の一節
今までに言ったさよならの中でいちばんしみじみしたさよならはどのさよならだったかを決める(決まったら心の中でゆっくりさよならをとなえる)。

ゆっくりさよならをとなえる
川上 弘美
新潮社 (2001/11/24)
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いつも手の届くところにあって欲しい一冊。

なにげなく手にとり、ぺらぺらと適当に頁をめくると、次のような一節が目にとまる。
ビール小瓶一本。燗酒を二本。ぬた。ほたるいかの沖漬。ちびちびと飲み、ちびちびと食べる。
  (略)
店のがらり戸を開け、のれんをかきわけながら外へ出た。月がまんまるだ。おぼろ月夜ではなく、くっきりとした春の月である。春のおでんだったね、と言い合いながら、駅までゆっくり歩いた。何かわからぬ花の匂いが、夜の中を漂っていた。大根の味が、ほんの少し口の中に残っていた。 (春のおでん)
でもって、「ああ、春のおでんもいいなぁ」と思う。